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ブルジョアママとヤンキー父ちゃん [ラヴ(ヒト)]

「東京タワー」を読んだ。
詳しい内容はご存知の方が多いだろうから、省略。

全然違うけれど、ついつい自分の両親と重ねて読んでしまった。


***

母は、湘南ガール。
小さい頃、江ノ島の海岸でちょっと潜れば
ウニが捕れたんだと聞いたことがある。

そして、母は結構なブルジョア家庭のお嬢さんであった。
昭和20年、終戦の年の生まれだ。
祖父はとある鉄道会社の社長をしており、
男5人、女3人の8人きょうだい。母は末っ子。
その頃には珍しいであろう、母以外の全員が「大学」を出ている。
母は、高校からエスカレータで女子大に入ったものの
合わずにすぐ辞めてしまったのだという。
母の記憶に寄れば、高校も大学も「試験を受けた記憶がない」。
おそるべし(笑)

伯父(母の兄)達は、大学でアメリカンフットボール部に所属し、
夏はサーフィン(さすが湘南)、乗馬、テニス。
冬はスキーを楽しむような生活。
小学生だった母も一緒に連れて行ってもらったそうだ。
日本舞踊、茶道、華道を習い、
お手伝いさんが2人いたとか、コリーを2匹飼っていたとか
葉山にクルーザーを持っていたとか、
今の母からはまったく想像がつかないくらいのブルジョアっぷり。

末っ子の母は、小さい頃から体があまり丈夫でなく
そのせいもあって、親はもちろんきょうだいからも
大事に大事にされていた。
自分で何かを決めたり主張することもない、
素直でボーっとした「世間知らずの箱入り」だったそうだ。
母には親の決めた婚約者がいた。
ふたりでクルーザーの上で写っている写真が何故か1枚だけある。
見合いの時の写真。優しそうで、ステキな男性である。
そのまま、ボーっとしたまま結婚する予定だった。



父は、関西ボーイ。
父から直接若い頃の話を聞いたことはない。
母や、祖母から聞いたことだ。
和歌山で、男ばかりの3人兄弟の真ん中として育った。
小さい頃からスポーツ万能で、高校までずっと野球部。
地元の大手企業に入社してからも、野球部に所属、
レギュラーでそれなりに活躍したそうだ。

ところが何がきっかけなのか、父はヤンチャへの道をたどる。
そのヤンチャっぷりは相当のものだったらしく
祖父母はかなり大変な思いをしたと聞いた。
結果、和歌山にいられなくなり、祖父の伝で上京。
その頃の写真を見たけれど、もう立派なヤンキーである。
リーゼントにボンタンにエナメルの靴。全部、ナナメに写ってる(笑)
関西っ子のくせに?「宵越しの金は持たない」江戸っ子気質。
一応会社員として働いてはいたものの、一体どんな生活だったのやら。
そのあたりは誰も知らない。



両親が初めて出会ったのは、父28歳・母20歳の時のこと。
知り合いの知り合い、くらいの関係だったらしい。
母いわく
「ボーっとしてたから良く覚えてない」。
お互いに『見たことないタイプ』に興味を持ったに違いない。



ふたりの結婚は、いわゆる「でき婚」。
母方からは、当然、猛烈な反対を受けた。
大事に育ててきた娘を、関西のヤンキー兄ちゃんになんかやれん。
その気持ちはよくわかる。
あの写真を見れば、ワタシだってそう思う。
どこをとっても、婚約者さんの方がステキなのだ。

母はその前後のことも、やはり
「ボーっとしてたから良く覚えてない」。

母は「二度とうちの敷居をまたぐんじゃない」などと
ドラマのように追い出され、父と暮らし始めた。
お金の価値も良くわかっておらず、
結婚生活の「普通」もわかっていなかった母は
一転したビンボー生活も「普通の新婚生活」と思っていた。

3畳一間。
家具はなく、ご飯を食べる時は畳に紙を敷く。
お金の管理は父が行い、お給料がいくらなのか知らず
渡されるお金だけで、買えるものを買っていた。
「おかず買えなくて、パンの耳食べたりしたー」
気がつけば電気が止まり。ガスが止まり。

ある寒い日、父が後輩を連れてやってきた。
暖房器具などあるわけもないので
「どうぞ、あったかいですよ」
と、自分がくるまっていた布団を勧めた母である。
後輩がビックリているのが不思議だったらしい。
世間ではそれは「普通」と言わないとわかるまでは
ちょっと時間がかかったのだそうだ。
箱入りもここに極まれりの母である。

結局、妊婦として必要な栄養が取れなかった母は、
第一子を流産してしまう。
次の妊娠時には、父方の祖母が和歌山から何度も足を運んで、
母に色々食べさせ、無事出産にこぎつけた。

それが、ワタシである。
和歌山の祖母がいなければ、ワタシもいなかったであろう。



その後、どうやらこれは普通ではないらしいと気付いた母は
ようやく「ブルジョア箱入りお嬢さん」から
「ビンボーに負けない強いママ」になっていく。
それでも相変わらずのヤンキー父ちゃん。
ボーっとしていて気にならなかったことが、気になる。

…うまくいくはずがない。



父が亡くなって7年が過ぎた。
母はやっぱりブルジョアではないけれど、
新しいパートナーと幸せな生活を送っている。
再婚によってできた孫達も可愛くて仕方ないらしい。
きょうだいとも交流が戻り、女同士で出かけたりと楽しそうだ。
普通の幸せってこういうことなんだと母を見ていて思う。

それでも、時々ワタシの顔をじっと見て母が言う。

「あの頃は必死だったけど…
 お父さんと会えて良かったと思うよ。
 お父さんと会えなかったらボーっとしたままだったから。
 おかげで自分の人生を歩いてるって実感があるよ。
 ○○(ワタシ)や△△(弟)にも会えたし。
 どーしよーもない人だったけど、
 優しいところのいっぱいある人だったよ。」

父に…父方の祖母に良く似ているワタシ。
ワタシに父を見ているんだろう。
夫婦のことは夫婦にしかわからない。



ブルジョアママとヤンキー父ちゃん。

交わることがなさそうなふたりの人生が
重なったところにワタシがいる。
「自分の人生を自分らしく生きていた、生きている」ふたり。
良くも悪くも、ワタシはふたりの娘である。
ワタシもふたりに負けないよう「自分」を生きていく。


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nal

泣いた!どんなコトバも陳腐に思えるほど胸にしみいりました。
話の内容も、JOHNさんの綴りっぷりも。
こういうステキな話に出会えるからココはやめられないし、またもっとイイ記事書いてみたいといつも思います。

ホントに感動した。今日ココに来て良かった。
ワタシも頑張ります。
by nal (2007-04-20 12:51) 

moonrabbit

歳をとった両親を思うと、何も返せていない自分を反省したり、開き直ったり(笑)。
それぞれの人にそれぞれの人生。共通する何かを持っているからこそ理解し合えるものと思います。
JOHNさんも今の年齢になったからこそ見えるご両親の姿があると思います。互いに出会えて良かったと思える人生を過ごしたいですね。(^^
by moonrabbit (2007-04-20 16:04) 

あゆゆ

今、自分の両親&ずっと一緒に住んでる祖母が死んでしまったら…
とてもとても立ち直れない、親離れのできていない私が来ましたヨ。
でも、確実に老いてきているわけで…。
旦那の付き添いで行った病院のロビーで
暇つぶしに読んでた『東京タワー』で涙をポロポロ流しながら号泣。
みんなに、お母さんにそっくりだと言われるけれど
実はお父さんに激似なワタクシ。
ちょっとづつ恩返ししなくちゃ。

ということで今日、パパに缶コーヒーをご馳走してあげた(←ちいせぇ!)
by あゆゆ (2007-04-20 17:38) 

やはりどんな風であっても父親は父親なんですね。
我が家も似ていると言えば似ているのですが、それでも父親が嫌いだとは思ったことがなかったな~。
幸いにして僕の父親は今でも健在ですので、親孝行をしないとなんてことは思ったりしています。なかなか出来ないんですけどね。
by (2007-04-20 21:29) 

のの

お父さまのお話は前に読んでいましたが。
お母さまがそういうタイプの方とは…想像しておりませんでした(笑)

男女のことは当人同士にしかわからない、「女」は弱いけれど「母」は強い。
世間一般によく言われるそんなことを改めて認識しました。
人生何が起きるかもわかりませんよー。本当に。つくづく思います。
これまたよく言われることですケド。
by のの (2007-04-20 21:48) 

nyack

ドラマ化決定!
「通天閣、ボンタンとリーゼントと時々エナメル」

JOHNさん素敵な遺伝子お持ちです。
by nyack (2007-04-20 22:12) 

親孝行ができる余裕ができたとき、すでに親父はアルツハイマー。そのまま寝たきりで亡くなりました。JOHNさんのお母様ほどではないものの、地主の家に生まれて世間知らずの母はいまだに世間知らずのままだったりしますが、とにかく何とか元気ではいるので、できるだけの孝行はしたいと思うTadです。

やはり年齢を重ねることで、親の存在のありがたさ、気持ちというものが多少なりとも分かってくるもんですね。
by (2007-04-20 22:42) 

浜松自宅カフェ

久々に、別の意味でJOHNさんらしい記事でした。
うちも親にはお世話になっているんだけど、なかなか素直になれない。
イカンなぁ。。。反省ザルになった記事でしたよ。
by 浜松自宅カフェ (2007-04-20 23:28) 

自分の人生を自分らしく・・・
素敵な言葉を聞かせてもらいました
そうですよね。
自分らしく進みたいと強く願う私の心でした
素敵な言葉に ふれることが出来て嬉しかったです
ありがとう♪
by (2007-04-21 00:36) 

kimiko

男と女が出逢って惹かれあう
その瞬間がふしぎというか好きです(笑)
私も、母が最初に好きになった人と結ばれていたら・・
この世に存在してなかったんだ。と考えたことがあります。
「ボーっとした?ヤンキー気質☆」
JOHNさんは両方のDNAを受け継いでいるんですね!^^;
by kimiko (2007-04-21 01:12) 

kotobuki

待っていた記事ですね(笑)
色々な出会いがあって、色々な思いが交差して、自分がある。今がある。
不思議ですよね。
とりあえず、JOHNさんとの出会いに感謝している私としては、
JOHN誕生に関わったすべての方に感謝します♪
by kotobuki (2007-04-21 17:57) 

polka-dots

はい。そして、私もお父様・お母様のお陰で、JOHN様に出会え、いっぱい助けてもらってます。全ての出会いに感謝です。
いつかは、遭遇するその場面。ちょっと想像しただけでも、グッと、グッとどころではないものがです。
ちょっとでも、会えるときに会って、話をしたい。そう思えます。
by polka-dots (2007-04-21 23:20) 

ひろ茶

ドラマティックなお話です!すごいです!これで映画作れるんじゃ…
うーん、父母の現在に至るまでのことは詳しくは知らないのですが、
聞くことも無かったですね。もしかして、すごい激動だったりしてww
うーん、人にドラマありですね。
by ひろ茶 (2007-04-22 17:49) 

まりもっこり

いつも読ませていただいていましたが
かなりのアナログ人間の私は中々コメントが書けず・・・
やっと登場出来ました(^-^*)/
やっぱり、JOHNさんはすごい!!!
文章の内容、綴り方すべてにセンスを感じます(o^-')b グッ!
実は最近、私は人間関係に悩んでいてまさに「私って???」
という状態でした。。。
でもJOHNさんのブログを読んで心が洗われますO(≧▽≦)O
きっと素敵なお父様とお母様から誕生したJOHNさんだからでしょうね?
これからも元気の素くださいね (v^ー゚)
by まりもっこり (2007-04-22 18:28) 

ゆみみん

感動しました!!!
こんな出会いがあるのですね。
お父様のヤンキーっぷりエピソードも、色々お聞きしたいところではありますが。
とにかく、お母様の
「お父さんと会えなかったらボーっとしたままだったから。」
という言葉が印象的です。
とっても波乱万丈な人生だったのでしょう。
JOHNさんの相変わらずの文才にも泣かされました。
すばらしぃ~~~!!
by ゆみみん (2007-04-24 02:41) 

JOHN

♪nalさん
「文章の師匠」と密かに思っているnalさんにそう言われると
大変恐縮いたします。ありがとうございます。
親の話は、ネタがありすぎて困るほどなのです。
今回は「ちょっとイイ話」風味でしたっ!


♪moonrabbitさん
何も返せていないです。ホント。
今は夫の両親と一緒に住んでいるので、親孝行しなくちゃと
思う機会が多いのですが…甘えっぱなしです^^;

♪あゆゆタン
あゆゆタンはご両親、おばあちゃんと仲良しだもんね^^
親との関係が薄かったワタシにはうらやましいほどです。
今度はドトールでコーヒーをご馳走してあげてくださいね(ちいせぇ!)

♪eddieさん
月並みですが、子供が元気で頑張ってるのが、
イチバンの親孝行じゃないかと思います。
(親じゃないからわからないんですが…)

***

時間がなくなってしまいましたので、
また後ほどコメントレスいたします!!
スミマセン!
by JOHN (2007-04-24 08:45) 

JOHN

♪ののさん
お父さま、お母さま…一瞬、誰のこと?と思ってしまいました(笑)
ののさんのご想像がどんな感じかは「?」ですが
母は、ビジュアル的には「お嬢さま」とは程遠い感じなのです。
ボーっとしていたというのも、想像がつきません^^;
守るべきものがあると、人は強くなると言うことなのかもしれませんね。

♪nyackさん
ウケル(爆)!!
いえーい!脚本nyackさんでお願いします。
父の話はまた書こうと思います。
いっぱいあるんだな、これが。

♪Tadセンセイ
何をもって親孝行というのかが、まだわかっていないワタシです。
親はいつまでも元気でいると思っている部分があるんですよね。
母は「あなたがあなたらしく人生を生きているのが一番嬉しいよ」と
言います。親ってそういうもんなのかも。
などと手前勝手に思っております。はい。

♪浜自カフェさん
色々お世話になることも親孝行ではないのでしょうか?
同居している夫の両親は、何かお願いするととても嬉しそうな様子です。
あてにされているのが嬉しいのかなぁ、と甘えてばかりです。
「ありがとう」はなかなか上手に伝えられないんですけどね^^;

♪Fountain☆さん
どういたしまして♪
自分で働き、軟弱主婦をし始めてから、母がどれだけ
大変だったのか、やっと想像できるようになりました。
それがわかってからの母の言葉は何だかとても重みがあります。
自分らしく、頑張りましょお☆

♪kimikoさん
不思議ですよねー。ほんと…
母が婚約者さんと結婚していたら、ワタシはいないわけで。
ワタシは「ボーっと」「ヤンキー」両方なってみたい。憧れです(笑)
でも、何故だかなれないのです。反面教師?

♪kotobukiさん
そう、あたためていた記事です。
人生、選択の連続で…うん、両親の選択には感謝!ですね。
kotobukiさんとの出会いにも感謝♡ふふふ。

♪dotsタン
せっかく実家に近いところにいるのですから
いっぱい会って話をした方がいいですよ。
何となく、親っていつまでもいるような気がしてるんだけど
…そうじゃないんですよね。
考えるとグッときますな。うん。

♪ひろ茶さん
ご両親に色々聞いてみるときっと面白いですよ。
人に歴史あり、です。
生まれた時から親だったわけじゃないですからね~。

♪まりもっこりさん
どうもー!ようやくのご登場、嬉しいです^^
しかし、褒めすぎです。何も出ませんよ(笑)
まりもっこりさんが悩む人間関係とは…ちょっと意外でした。
今度ゆっくりお話したいですわん♪
こちらこそ、また元気の素よろしくです!

♪ゆみみんさん
父のヤンキーっぷりについては、また後日記事に
できればいいなぁと思っています。
面白すぎるエピソード満載人生なので。
家族の中では、父が一番幸せだったに違いないのです(笑)
ゆみみんさん、褒めすぎですよ。
でも、嬉しいです。ありがとうございます♪
by JOHN (2007-04-24 20:57) 

JOHN

♪はにぃさん
 shinoさん
nice!ありがとうございます^^
by JOHN (2007-04-24 20:58) 

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